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症例集

 

【case32】主訴 起立性調節障害(全身の倦怠感、朝起きれない、座ったり立ったり出来ない、頭痛や腹痛)
アトピー性皮膚炎
|兵庫県芦屋市在住|小学5年生男子 平成30年1月初診

主訴の状態

  • H29.1 全身の倦怠感、疲れ、腹痛、頭痛の症状がでるようになる。
  • 同時期から顔・肩・首を中心にアトピー性皮膚炎が出る。
  • 朝起きるのもしんどくなり、なかなか目が覚めなく、覚めても身体が動かない症状も起きる。
    このすぐ後から学校に行けなくなる。
  • 座る事、立つ事もしんどくて、一日中ほとんどの時間を寝ころびながら生活するようになる。
  • 病院では起立性調節障害と診断される
  • 症状が出だしてから1年ほど上記の症状が続き、学校にも行けないままの状態で当院へ来院される

今回の起立性調節障害の症状のまとめ

  • 全身倦怠感がかなり強い。
  • 座る事、立つ事が出来なくなる。
  • 頭痛は、朝、全体的にガンガンする。
  • 腹痛は昼から夜にかけて常に軽い痛みがあり、突然きつい痛みが出る。
  • 指・膝・足首を動かすと関節が痛い。
  • 1年ほど微熱がずっと続いている。

治療内容

神経の過剰な興奮を抑える治療上半身の血ののぼせを下に降ろす治療東洋医学的な下半身の力を回復する治療
これらの治療方針で、背中、頭手足のツボに刺さない鍼で刺激を行う。
本来は大人の方には刺す鍼をするのですが、鍼に少し恐怖感もありましたので、今回刺さない子供用の鍼で治療を行いました。(1回5分ほどの治療です。)

2診目の後から、座る事が出来るようになる。
徐々に尿意を催す時間が長くなってくる、常にあった下腹部の疼きが忘れている時が少し出てくる。

3診目の後から、5分程立ったり歩いたりが出来るようになる。
またこれくらいの時期から、朝が早く目覚める事が出来るようになる。

4診目から倦怠感も少しずつなくなる。
朝の頭痛や夜の腹痛も出なくなる。

5診目から学校に行けるようになる。
朝から登校するが昼には倦怠感が出てくる。

7診目から学校に行っても一日中倦怠感が出なくなる。
このあたりからアトピーもかなりマシになる。

その後ちょこちょこ疲れを取って、バランスを整えつつ、学校にも塾にも休まず行くことができ、
起立性調節障害の症状も出なくなり、アトピーも綺麗になり、以前と同じ生活を取り戻すことが出来ました。

解説

この起立性調節障害と診断されて来院する子はこの3年ほどで急激に増えています。
時期にもよりますが、1日に3~4人は治療しています。

ではこの子の起立性調節障害の原因を説明していきましょう。
まずこの子は勉強が大好きで、学校の勉強の他に進学塾にも行き、勉強にかなりのめりこんでいたそうです。

この生活が続いていく事により、まず神経が過剰に興奮しすぎた状態が続いてしまいます。
いわゆる自律神経が乱れて交感神経優位になりすぎた状態になります。
このような状態になると、全身筋肉も緊張して、首肩のこりや頭痛が起きてします。
また交感神経が優位になっていると、無駄に体力を使ってしまいます。
私たちも緊張状態が続いた時にどっとしんどくなりますよね。
そのような状態です。

更に勉強にかなり熱中することで、常に頭に血がのぼせ上った状態が続きます。
人間の身体ではよく動かしたり、使う場所に血が集まる性質があります。
ですので勉強に熱中し過ぎたり、頭の回転が休むことが無くなると、頭に血がのぼせ上ってしまいます。
上半身のアトピーや、頭痛もこの事が原因で起きています。

さらに、頭に血がのぼせ上る状態が続くことによって、下半身に血がうまく巡らなくなってしまいます。
そうすると東洋医学的な下半身の力(五臓六腑でいう腎)が弱くなってしまいます。
この下半身の弱りがあると、全身倦怠感が出てしまいます。

また、東洋医学の考えで経絡というものがあります。

体の色々な所を走っている栄養を運ぶ線路みたいなものです。
この下半身の力(腎)が弱ると右の様な経絡(足の太陽膀胱経)が弱くなってしまいます。

脊柱起立筋いわゆる背筋に通っている経絡なんです。
脊柱起立筋はその名の通り、背中を起き上がらせている時に働く筋肉です。
この足の太陽膀胱系の経絡が弱る事により、脊柱起立筋の働きも弱ってしまい、座る事も立つ事出来なくなってしまったのです。

少し難しくなってしまいましたが、まとめますと
①神経が過剰に興奮している事(自律神経の乱れ)
②頭に血がのぼせ上がってしまう事
③下半身の力(腎)が弱ってしまう事
以上の事が原因で、今回の起立性調節障害の様々な症状が起きていました。

一概に起立性調節障害だからといって治療法が一緒ではありません。
それは症状や体質、生活環境によって原因が大きく違ってくるからです。

その子の苦しんでいる原因をきっちりと判別する事で、今回の症例の様に早期の回復が可能になります。

現在同じように起立性調節障害と診断されて、苦しまれている親子が非常に多くいます。
このような方々も、今回の症例の親子の方のように早く元の元気な姿に戻り、明るく楽しい生活を取り戻せるように、私は微力ながらも精一杯つらい症状に立ち向かっていきます。